おいしい関係

 

中国に来たら、食べなければ始まらない。今回の目標は「王宝和(ワンバオホォ)」のカニ料理「玉仏寺(ユィフォス)」の精進料理である。

上海に着いた日。ホテルの部屋に落ち着いてちょっと休憩した途端、猛烈な空腹を覚えた私たち。まだ午後3時だというのに(日本時間は午後5時)すでに心は「夕食に何を食べるか」というところにある。ちょっと街を歩いてお散歩したら夕ご飯にしようということになった。

しかし中国のレストラン、どこの店も夕方は5時にならないと開店してくれないのだ。仕方がない。細い路地裏を歩いて時間をつぶす。何やらいい匂いがする。香ばしい麺食(小麦粉製品)の匂いだ。小麦粉を麺状に伸ばして油で揚げたもの(日本で売っている中国風かりんとう「麻花児(マァホワル)」の甘くないのを想像して欲しい)を売っている。店を商っているのは若夫婦。大きな店を出すことを夢見て日夜がんばっているのだろう。「こういう夫婦って応援したくなるんですよね」と早くも目をうるうるさせるMお姉さま。「こういう店はおいしいに決まってる」と藁にもすがりたい私。食べたいと思った瞬間にお金を出していた。このプリッツ風のものをポリポリかじりながら、さらに路地を行く。途中小さな商店があったので、ホテルに帰ってから食べるおやつとビールを買い込み、さらに歩く。この日は体調が悪いながらも死ぬほど空腹を覚えた私たちは有名店の開店時間が待ちきれず、とりあえずそこらにあった店(結構繁盛していたようだ)に入って夕ご飯にありついた。

そして翌日の日曜日。豫園のそばの朝市で買い食い。この、買い食いがいい。日本では絶対しない。でも、中国では当たり前。新鮮なサトウキビを斧で割ってもらい、これに歯を立てる誘惑。アツアツの小龍包(スープ入りの小さい肉まん)を頬張る幸福。どれも捨て難い。で、まあ今回の収穫は、焼き芋天津煎餅焼き小龍包といったところか。あと、名前はわからないが、ご飯を四角く切って油で揚げたものもあったな。しかし、歩きながら食べる点心ってどうしておいしいんだろうなー。冷えた体が徐々に暖まって、力が漲っていく感じ(でも腹の調子はよくない)。

そんなこんなで道を歩いているうちにお腹は満足。心も満足。ついでに財布も満足のお値段である。日本にもこういうところがあればいいのになあ。と、心から思う。

さて、昼食は玉仏寺の精進料理である。精進料理だからといって侮ってはいけない。中国の精進料理は日本のものとは違うのだ。肉類・魚類は一切使わないものの、見た目は肉や魚と変わらない。レンコンを肉に見立てた酢豚、大豆たん白で作ったハム、主材料の不明なカニ料理。実に不思議なものばかり。しかも、これが脂っこいのだ。動物性蛋白の代わりに油脂をたっぷり使うことで腹持ちをよくするというわけである。キヌガサダケのスープもなんだか脂っこい・・・ でも・・・なんだかおいしいぞ。油で炒めた青菜からいい出汁がでてる・・・油っぽい青菜さえ避けて食べればなかなかいけるではないか。

夜は王宝和のカニ料理。豆腐のカニあんかけ、カニ入り小龍包・・・本来なら「上海蟹」を食べるべきなのだろうが、こちらは少々お高い。おいしいのに食べるところがほとんどない。今回は涙を飲んで我慢である。しかし、豆腐の煮加減が絶妙。とろとろの豆腐(最近、中国でもこういう豆腐が増えてきた。昔の豆腐は紐で縛れるほどかたいうえ、角に頭をぶつけると死んでしまいそうなものであった)にカニ肉がたっぷり入っている。これこれ。こういうのが食べたかったんだ。(一言つけくわえるなら、私は豆腐が嫌いである。あの主体性のないところが)

3日目は禁欲的な生活。朝、ホテルで遅い朝食を摂り、そのあとのんびりでかける。この日は上海美術館に行ったので、中の茶室で、中国茶とクッキーを食べて昼食にする。(日本のようなミュージアムレストランはないのでした)

夜は生まれて初めての「四川火鍋」。火鍋にもいろいろな種類があるが、今回食べたのは、中華鍋の真ん中に仕切りがあり、二種類のスープの中で具を煮る形式のものである。スープは白く澄んだ清湯スープと、トウガラシで真っ赤になった紅湯スープである。この紅湯スープ、中途半端な気持ちで挑むと火傷する。辛いのが得意な私でもちょっと怯むくらいである。(辛いというより、むせるのだ)頼んだ具はカニ・エビ・タウナギ・桂魚(グェイユィ)・香菜・春雨・水餃子・蛋皮餃子・・・その他いろいろ。「これがタウナギ。上海名物でドジョウのような味がするのね。桂魚も中国独特の白身魚。あっさりした肉がいい感じ。蛋皮餃子は卵液を玉杓子に薄く流して焼いて、ここに餃子の具をはさんで作るの。これも中国の鍋には欠かせないのね」と嬉しそうに語る私を尻目に黙々と食べるドラちゃんとMお姉さま。

最終日はホテルの近くを散歩して、近くの中国系デパートでおいしそうなシュークリームをみつける。なんだかワッフルもおいしそうだ。早速購入。こういうところが、さすが国際都市。北京や天津が逆立ちしたってかなわない。洋菓子を気安く街中で売っている(しかも正しい洋菓子。北京で売っているのは間違った洋菓子である)のは上海ならではである。去年もこうだったかなあ?

ああ。おいしかった。満足、満足。

 


機内食はかなり豪華。
というのもビジネスクラスだったから。


これが「玉仏寺」の精進料理。
3人前なのにこんなにある……


できたてのアツアツがおいしい焼き小龍包。
10個で2元=30円くらい。
かじると中から熱いスープがジュルッっと
出てくるので食べるときにはご注意を。。。

朝市ではいろいろなものが売られている。
木の実や乾した果実等を売っている。
冬なのにとってもカラフル。

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