茶芸多才 〜2日目〜

明け方5時半、エンちゃんがシャワーを浴びている。6時に起きようって言ってたのに、ちょっと早過ぎないか? まあ、いいけど。私はそのままベッドの中でうつらうつらしながら過ごし、7時ちょっと前に起き上がった。隣りのベッドで寝ているエンちゃんを起こして事情を尋ねると、「携帯電話の時刻が日本時間のままだったから、6時半のつもりで起きた」のだそうだ。「あ、遅くなった!」と思って慌てて起きてシャワーを浴びて、もう一度よく考えてみたら5時半だったらしい。だから昨日、「携帯電話の時間を中国時間に直さなくていいの?」って聞いたのに。(^^;
さて、朝の支度を終えたら7時5分。今日の集合は8:40なので、まだ時間がある。エンちゃんは身支度の最中なので、私は一人でホテル周辺の散策に出かけることにした。このあたりには回族(イスラム系の少数民族)が多く、朝の屋台でも回族独特の味を楽しむことができる。早速ぶらぶらしながら、餡儿餅(シァルビン)のようなものをゲット。通りの様子は大体把握できたので、部屋に戻ることにした。今回のツアーは朝食付き。もし、ホテルの食事がおいしくなかったら、外で朝食をとるための下見を兼ねていたのだ。
7時半にエンちゃんとともに朝食へ。種類は豊富で、味はまあまあだったけど、これなら毎日食べなくてもいいかな、という感じ。適当に食事を済ませ、部屋でしばらく休んでから、集合場所へを降りていった。
まずは
陝西歴史博物館へ。ガイドの金さんに説明してもらいながら、博物館の中を歩く。周以前から清代までの2000年以上の歴史的文物が展示されているのだ。そのほとんどがここ西安から出土したもので、一つ一つ見ていくと、2時間では足りないほどのボリュームだ。私はだんだん他のみんなに遅れていき、ついに最後は一人になってしまった。それでも、各時代の土器を見ていくうちに、その変化が素人の私にもわかってきた。形状はより実用的に、装飾は簡素に、模様は複雑に、様式は華麗になっていく。こんな風に、全ての時代を通して見るチャンスがなかったので、今まで気づかなかったけど、その変化はやはり時代の変化とマッチングしている。ここで夢のような2時間を過ごし、展示物のカタログを買い、建物を出ようとしたところで、ブレスレットを見つけた。古い陶器のかけらを集めて作ったブレスレットで、値札には375元(約4875円)と出ている。私とエンちゃんで交渉するも、なかなか解決しない。ここでガイドの金さん登場。彼女は私たちより3つほど年上で、唯一の中国人参加者のエンちゃんと、すっかり気が合っている様子。彼女の交渉で老板(ラオバン=支配人)を呼んでもらうと、彼はいきなり「100元でいい」と言い出した。呆気にとられる店員とエンちゃんと私。私たちは呆然としながら100元ずつ払い、店を後にした。あとで聞いてみると、100元というのは仕入れ値なのだそうだ。そりゃあ、店員もびっくりするわね。
次に、博物館前のお茶屋さんへ。ここで中国茶の試飲と、茶芸を見せてもらうのだ。で、お金があればお茶も買う、と。まずは奥の部屋で、実際に何種類かのお茶を、茶芸独特の入れ方で飲ませてもらう。一杯飲むと苦いけど、次に白湯を飲むとただのお湯が甘く感じられる不思議なお茶や、楊貴妃の好んだライチ入り紅茶などを試飲させてもらった。続いて、自由にお茶や茶器を購入するお買い物タイム! 私とエンちゃんが、シマリスのついた急須を見つけて騒いでいたら、お店の小姐が寄ってきた。「それ、欲しいなら600元にしてあげる」と、まあそんな会話をしていたところ、珍しい急須を発見。それは4つの急須をつなげると、一匹の龍の形になるもの。その値段を見てびっくりした。なんと数万元するのだ。「これ、すごいねー」と言っていると、その小姐が「そんな高いのを買うことないよ。そんなの買ったら、帰ってからママに怒られるよ!」と言う。どうやら私たちを若い学生だと思ったらしい。私は桃の形の急須(大小あって、大きい方は200元、小さい方は180元だった)がどうしても欲しかったので、小さい方を130元に値切ってみた。すると彼女はちょっと考えてOKを出したあと、大きい方を包んでくれた。小さい方が欲しかったんだけど、まあ、いいか。あとで彼女が年齢を聞くので、正直に答えたらビックリして、全然信じてくれなかった。(^^;
さて、昼食は包子食べ放題。ちょっと皮が厚くて具が少なかったけど、まあまあの味。炒飯は昨夜よりおいしかったかも。たっぷり食べたあと、お土産屋さんに連れて行かれる。これはまあ覚悟してたんだけど、翡翠専門店で、その値段設定では貧乏な私には何も買えませんです、ハイ。ここでは目の保養だけして、
大雁塔の観光に行く。大雁塔は小乗仏教のお坊さん達が、お腹が減って「お肉が食べたいなー」と祈ったところ、一羽の雁が落ちてきたという逸話に基づいている。落ちてきた雁はお釈迦様が姿を変えたものだと気付き、お坊さん達は大乗仏教を信じるようになったというのだ。それにより、雁の落ちてきたところに建てられたのが大雁塔だという。この大雁塔、地上24mの高さで、6階まである。塔に登るのは希望者だけということだったので、私も25元を用意し、塔に登った。一気に最上階まで登っていくと、四方が遠くまで見渡せる。少し霞んでいて、西安の城壁は見えなかったけど、それでも西安の様子が見渡せて、気持ちのいい眺めだった。今、西安はどんどん街の様子が変わっているという。今日見た景色は、次に来たときにはきっと見られないだろう。私はしっかり景色を写真に残した。
そして次は
青龍寺。ここは空海が修行をした寺で四国八十八箇所の霊場の0箇所目として数えることのできる場所だという。今まで見てきた中国の寺の中で、もっとも簡素で地味な寺。どちらかというと、日本の寺に似ている。なるほど、真言宗の祖はここにあったか。
最後は
興慶宮公園へ。ここで阿倍仲麻呂記念碑を見て、本日の観光は終了。バスは西安賓館に向かった。今夜はここで四川料理を食べることになっているのだ。でも、私達は西安賓館に着いたところでバスのメンバーと別れて、火鍋を食べに行くことにした。ガイドの金さんに市内で一番おいしい火鍋屋さんを教えてもらった。家族3人で160元くらいだと言う。それなら値段も心配ないので、安心して「竹園村」に向かうことになった。バスの運転手さんによれば、この時間帯は車が混むので、タクシーではなく、路線バスを使った方がいいとのこと。エンちゃんと私は、それぞれ1元を手に持ち、バス停で「一寨」を通るバスを探す。何路線か見付けたので、口の中で路線番号をぶつぶつ呟いていると、早くもそのバスがやってきた。私達はやってきたバスが停まり、客が降りるのを待って乗り込んだ。いや、乗り込もうとした。ところがエンちゃんが乗ったところでバスのドアが閉まり、私はドアの前で呆然。すぐにドアを開けてくれたので私も乗ることができたが、どうも様子がおかしい。私達はバスの中央にある出口から乗ってしまったのだ! 入口は前方にあったのだ。しばらく「どうしよう?」と相談していると、バスの運転手に「後ろから乗った2人の小姐、お金を払いなさい!」と怒られた。慌てて私がお金を払いに行ったが、しばらく動揺がおさまらなかった。きっと「この田舎モノが!」と思われたことだろう。乗客たちも「ほんとにもう、田舎者なんだからっっ」と思ったに違いない。そして、降りるバス停を探そうにも、今停まっているバス停がどこなのか全然分からない。結局まわりの人に「一寨はどこ?」と聞くと、3人くらいの人が「次だよ」「次!」と教えてくれて、バスが止まる直前にもう一度「ほら、一寨よ!」と教えてくれた。うーん、やっぱり私達、右も左も分からない田舎者に見られているらしい。(^^;
バスを降りて店を探すと正面にあった。店は家族連れやグループ客でにぎわっていて、私達の前に15組ほど待っていた。待っている間、豆乳やカボチャの種を自由に食べてよいので、椅子に座って豆乳を飲みながら待つことにした。待つこと1時間。ようやく私達の番が来た。小さい席に案内され、火鍋と調味料、その他の肉や野菜を注文する。あっちのテーブルにはすっかり酔っぱらった女の子5人のグループ(ビールの空き瓶が10本以上あった)、こっちのテーブルには退屈した子供を好き放題に遊ばせて周囲に迷惑をかけている家族、そっちのテーブルにはそれぞれが別のことをいて全く会話のない家族……と、いろいろな事情を学ばせていただいた。私達はといえば、テーブルに食べきれないほどの皿を並べ、周囲の客の目をまん丸にさせていた。アヒルの肉をベースにした火鍋はヒーヒー言うほど辛く、でも日本では絶対に食べられないおいしさで、私もエンちゃんも満腹になった。とくにアヒルの肉は、1羽分まるまる入っていて、それが箸でくずれるほど軟らかく煮込まれている。このスープでしゃぶしゃぶしたサツマイモや香菜はおいしいに決まってる。なので、これ以上書かないけど、値段はわずか142元(約1846円)でした。
帰り道、糖葫蘆(タンフゥルゥ)を買った。これはサンザシの実を串に刺して飴がけにしたもの。ホテルに帰ってからお風呂あがりに1本ずつ食べた。実は私、初めて食べたけど、かなり気に入った。ちょっと酸っぱいサンザシと甘い飴。幼い頃に食べたリンゴ飴のような感覚。ついでにエンちゃんの糖葫蘆にまつわる思い出話も聞いたりして。
こうして夜は更けていき、1時頃に寝た。
(旅行中につけていた日記に加筆・修正したものです。なお、タイトルの「茶芸多才」は“多芸多才”をもじったものです)


ホテル横にある通りの朝市。
おいしそうな店が並んでいる。


陝西歴史博物館に入る。
中国一の展示物といわれる。


これが殷の時代に作られた土器。


貝で作られた貨幣。
これがお金の一番最初の形である。
実物を見たのは初めてかな。


漢の時代になると、
墓の副葬品として家畜小屋などが収まる。


26面体で作られた印鑑。
これなら1つ持ち歩けばいいのだ。


お茶屋さんにあったシマリスの急須。
なかなかかわいいでしょ。


キャベツの包子食べ放題。
もちろん他の料理も出る。


博物館で買ったブレスレット。
エンちゃんとおそろいです。


翡翠専門店にあった楽器の置物。
まるで飴細工みたいにきれい。


現在は6層構造の大雁塔。
玄奘の時代には4層だったらしい。


塔に至るまでには沢山の建物が。
それぞれ見所十分である。


大雁塔の最上階から北方を眺める。
この向こうに市街がある。


空海が修行した青龍寺。
まさに真言宗の聖地である。


興慶宮公園にて。
橋の欄干にアヒルちゃんがいた。


日本では帽子をかぶらないが、
西安ではこうして帽子をかぶっていた。


火鍋専門店で夕食。
テーブルいっぱいの具材に感激。


糖葫蘆やイチゴ飴。
葡萄や胡桃もある。

 

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