この日、私は寝過ごした。朝起きたら9時だった。中国の朝は早い。いつも中国では5時〜6時半に起きているのに、こんなに遅くまで寝ていたのは初めてだ。大慌てで身支度をして外に出た。

街の中はすでに目覚めきっていて、私はホテルから大柵欄を抜けて前門まで歩いた。途中、胡同の中で朝ご飯を食べ、のんびりと歩いていった。そのまま天安門広場を目指し、地下道を4回も降りたり昇ったりした。非効率的な地下道は何とかした方がいいと思うぞ。

天安門広場はいつもと同じように人が多かった。凧揚げをしている人もいたし、毛主席紀念堂を背に写真を撮っている人もいた。ここは昔からあまり変わらない場所のようだった。少しずつ天安門に近づいていくにつれて、なんだか故宮にも入りたくなった。もう何度も訪れているから今回はやめようと思ったのに、見ているうちにどうしても入りたくなった。早速チケットを買い、故宮の門をくぐった。中は想像通り、観光客でいっぱいだったが、私は建物を見て雰囲気にひたれたらそれでいいのだ。ゆっくりと北門まであるき、そのまま景山公園に入り、故宮を一望した。私はすっかりおのぼりさんフルコースを堪能。

さて。今度は王府井に行き、スターバックスでケーキとコーヒーの昼食。こういう店ができて、本当に便利になった。昔はちょっと腰をおろして休みたいと思っても、そういう場所がほとんどなかったのだ。

コーヒーで元気の出た私は、地下鉄で大望路まで行き、東郊市場を見に行った。ここにはペット市場もあるのだ。仔猫ちゃんやウサギちゃんがたくさんいて、「1匹持ってくかい？」なんて店の人に聞かれたけど、涙をのんで首を振った。ここはこれ以外にも日用品がたくさん売りに出されていて、「長期滞在者には便利だぞ」と思ったりした。

自由市場を堪能したら、今度は王府井で夕ご飯だ。学生の頃から行ってみたかった「東来順」で羊肉のしゃぶしゃぶを食べるのだ。私の周りには「肉は嫌い」とか「羊肉は嫌だ」という人が多く（みんなワガママなんだから……）、ここには一度も行ったことがなかった。街で出会ういろいろな人に、「え？　一人で来たの？」と驚かれたが、一人歩きだとこういうときに便利だ。行きたいときに行きたい場所に行けるから。初めての東来順は（羊肉のしゃぶしゃぶはそのものは初めてではない）、夢が叶ったうれしさと寂しさが入り混じった味でした。